令和2年(2020年10月)問2<保証>
令和2年7月1日に下記ケース①及びケース②の保証契約を締結した場合に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
- ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
- ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
- ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
- 保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
解答
【設定図】
(ケース①)個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合
(ケース②)個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合
①の解説:誤り
【問題文①】
ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。
【民法 第446条
1.保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2.保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3.保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
ケース①やケース②のどちらにしても、保証契約は、書面でしなければ、効力を生じません。従って、ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効とする記述は誤りとなります。
基礎問題なので、ここはOKですね。
②の解説:誤り
【問題文②】
ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。
第465条の2第1項(一部抜粋)
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(=根保証契約)
で、かつ保証人が法人でないものを『個人根保証契約』という
第465条の2第2項
『個人根保証契約』は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
【ケース①】正しい
事業資金1,000万円の借入に対する保証の為、債務が特定されいることから根保証契約ではありません。よって極度額を定める必要がありません。
【ケース②】誤り
「賃貸借契約に基づくAの一切の債務」とありますので、これは不特定の債権であり根保証契約となりなります。この場合、保証人が個人の場合(個人根保証契約)には、極度額を定める必要がありますが、法人の場合には、極度額を定める必要がありません。
よって、【Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。】とあるのは誤りとなります。
その為、答えは【誤り】となります。
ここは、難度が高いので解けない人も多かったと思います。
③の解説:誤り
【問題文③】
ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。
連帯保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がないということになります。
したがって、債権者が「支払え!」といってきたときに「まず主たる債務者に請求せよ」と言い返すことができないということです。
【ケース①】も【ケース②】でも共通のルールです。
これは、基礎問題なので確実答えられるようにしましょう。
④の解説:正しい
【問題文④】
保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。
1.事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。
保証人が下記である場合、保証意思宣明公正証書の作成は、不要です
①法人である場合
②主たる債務者と共同して事業を行うものである場合
「事業資金1,000万円のための借入の保証」であり「保証人が事業に関与しない個人」であるため、保証意思宣明公正証書の作成がなければ、その効力を生じません。
【ケース②】
居住目的の賃貸借契約であって、そもそも事業とは関係がありません。
よって保証人が、個人であろうと法人であろうと保証意思宣明公正証書の作成は、不要です。
難問になりますが。
居住用の賃貸借契約で、保証人を立てる際にその都度公正証書が必要としたらそれは、実務上かなりの手間となり居住物件の流通性から考えても不要かなと推測できるといいですね。
<まとめ 正解:4>
①は、基礎問題
②は、難度が高い
③は、基礎問題
④は、難度が高い
難度が高いですが②と④の2択になるところまでは絞れる問題ですが、
②と④の知識がなかったとしても、④を推測出来れば得点取れる問題です。