令和2年(2020年)10月

令和2年(2020年10月)問3 契約解除・判例文【宅建過去問】

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令和2年(2020年10月)問3<契約解除・判例文>

次の1から4までの契約に関する記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。なお、これらの契約は令和2年4月1日以降に締結されたものとする。

(判決文)
法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当である。

  1. 土地の売買契約において、売主が負担した当該土地の税金相当額を買主が償還する付随的義務が定められ、買主が売買代金を支払っただけで税金相当額を償還しなかった場合、特段の事情がない限り、売主は当該売買契約の解除をすることができない。
  2. 債務者が債務を履行しない場合であっても、債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないときは付随的義務の不履行となり、特段の事情がない限り、債権者は契約の解除をすることができない。
  3. 債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。
  4. 債務者が債務を履行しない場合であって、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができる。

解答

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①の解説:正しい

【問題文①】
土地の売買契約において、売主が負担した当該土地の税金相当額を買主が償還する付随的義務が定められ、買主が売買代金を支払っただけで税金相当額を償還しなかった場合、特段の事情がない限り、売主は当該売買契約の解除をすることができない。

(判例文)
契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができない

問題文には、「税金相当額を買主が償還する付随的義務」とあり、判例文と内容が同様となるため契約は解除することが出来ない。

なので、【正しい】
判例文と照らし合わせて落ち着いて読めば解ける問題ですね。


 

②の解説:誤り

【問題文②】
債務者が債務を履行しない場合であっても、債務不履行について債務者の責めに帰すべき事由がないときは付随的義務の不履行となり、特段の事情がない限り、債権者は契約の解除をすることができない。

(判例文)
当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができない

問題文の、「債務者の責めに帰すべき事由がないとき(帰責義務)」は、契約解除の判断に関係するのかどうか?ということが論点です。
判例では、「主たる目的に達成に必須ではない」ものが「附随的義務」であり、帰責義務によって契約の解除にあたるかどうかについては、記載がありません。
そのため、帰責事由があろうとなかろうと、債権者は契約の解除できるケースがあると判断できるため、【誤り】ということになります。

この問題は、何が論点で、判例にはどう書いてあるかを対比して正しく読み込むことが出来れば問題なく解ける問題です。

③の解説:正しい

【問題文】
債務不履行に対して債権者が相当の期間を定めて履行を催告してその期間内に履行がなされない場合であっても、催告期間が経過した時における債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、債権者は契約の解除をすることができない。

(判例文)
法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠ったに過ぎないような場合には、特段の事情の存しない限り、相手方は当該契約を解除することができないものと解するのが相当である。

判例文にある通り、「目的を達することが出来ない場合の救済」としての解除であり、記述されている「軽微」とされるような「附随的義務」であれば、債権者は契約を解除することが出来ないと判断することが出来ますので、【正しい】となります。

判例にある通り、債務不履行の内容が、解除の判断にされるということですね。
言葉が「軽微」と言い換えられていますが。言葉の意味から推測出来ますね

④の解説:正しい

【問題文④】
債務者が債務を履行しない場合であって、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができる。

(判例文)
法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、該契約をなした目的を達することができない場合を救済するため

とありますので、解除は出来るとすぐに判断できますね。
ただし、【催告】が必要かどうかがポイントですね。

民法 第541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。

ということは、原則【催告】が必要ということなんですね。
しかし、

民法 第542条
次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
1.債務の全部の履行が不能であるとき。
2.債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
3.債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
4.契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達成することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
5.前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。

ここで「債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき」は催告することなく、直ちに契約の解除をすることが出来る。
とありますので、本記述は【正しい】となります。

この記述では、判例文だけでは解ききれない問題の為、解けない人も多いかと思います。

<まとめ 正解:2>
①は、判例文から十分読み取れます。
②は、判例文から十分読み取れます。
③は、判例文から十分読み取れます。
④は、判例文だけでは、問題が解けないため民法の知識が必要になります。

④については、判断が付かなかったとしても、①②③の中で十分問題が解ける問題です。

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