令和2年(2020年)10月

令和2年(2020年10月)問5 委任契約【宅建過去問】

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令和2年(2020年10月)問5<委任契約>

AとBとの間で令和2年7月1日に締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
  2. Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
  3. Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。
  4. Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。

      

解答

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①の解説:正しい

【問題文】
Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。

委任者Aが受任者B

民法 第648条(受任者の報酬)

1.受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2.受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、
  これを請求することができない。
  ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定
  を準用する。
3.受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求
  ることができる。
  一、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をす
    ることができなくなったとき。
  二、委任が履行の中途で終了したとき。

この条文からすると、報酬全額ではなく履行の割合に応じて報酬請求となりますが、
条文は、A=委任者の「責めに帰することができない事由」がポイントであり。
記述では、A=委任者の「責めに帰すべき事由」がポイントになっています。

なので、そもそもこの条文の内容と記述の内容が異なる場面なのです。
ここまでは、正確な基礎知識を持っていれば解読できますが。
問題は解けません。

そこで、推測してみましょう。
この場合、依頼した委任者に落ち度がありそのせいでBである受任者は、履行が途中になってしまったということです。そこでA(委任者)に責任があるのだからB(受任者)は、報酬を全額請求してもいいかどうか?ということです。
こう考えると、あくまでAの落ち度ですので、Bは全額請求できるというのは筋が通っていると考えられるのではないでしょうか。

この正解は、民法の危険負担が適用されています。

民法 第536条の2(債務者の危険負担等)
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

問題文の内容通りの条文になっていると思います。
その為、答えは【正しい】となります。

まとめると
委任者の「責めに帰することができない事由」であれば、既にした履行の割合に応じて報酬を請求
委任者の「責めに帰すべき事由」であれば、反対給付の履行を拒むことができない(全額請求できる)

中途半端な理解と知識をもってこの問題をみると解けない問題ですが、
正確な基礎知識を持ち、推測力があれば答えにたどり着くことも出来る問題です。

 

②の解説:誤り

【問題文】
Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。

委任者Aが受任者B

民法 第644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

よって、答えは【誤り】
これは、基礎問題です。

③の解説:誤り

【問題文】
Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。

委任者Aが受任者B

問題文から、受任者Bの帰責義務によって途中で終了したわけであり、委任者Aには帰責義務がないことがわかります。
※1肢の解説の【民法 第648条の3】の通りです。
委任者の責めに帰すことができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができます。
よって答えは、【誤り】です。

④の解説:誤り

【問題文】
Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。

委任者Aが受任者B

第653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一  委任者又は受任者の死亡
二  委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三  受任者が後見開始の審判を受けたこと。

その為、委任は当然終了しますので、答えは【誤り】です。
これは、基礎問題です。

ただし、「急迫の事情があるときは」以下のとおりです。

第654条
委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者又はその相続人若しくは法定代理人は、委任者又はその相続人若しくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。

<まとめ 正解:1>
①は、正確な知識と推測力両方が求められます
②は、基礎問題です。
③は、正確な知識が求められます。
④は、基礎問題です。

①と③で、迷うところだと思います。
知識の深追いは禁物ですが。
正確な基礎知識と推測力をつけて突破しましょう。

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