令和2年(2020年10月)問11<借地借家法(借地)>
A所有の甲土地につき、令和2年7月1日にBとの間で居住の用に供する建物の所有を目的として存続期間30年の約定で賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
- Bは、借地権の登記をしていなくても、甲土地の引渡しを受けていれば、甲土地を令和2年7月2日に購入したCに対して借地権を主張することができる。
- 本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。
- 本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。
- AとBとが期間満了に当たり本件契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。
解答
①の解説:誤り
【問題文】
Bは、借地権の登記をしていなくても、甲土地の引渡しを受けていれば、甲土地を令和2年7月2日に購入したCに対して借地権を主張することができる。
第605条(不動産賃貸借の対抗力)
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その後その不動産について物権を取得した者に対しても、その効力を生ずる。
-
借地借家法 第10条1項(借地権の対抗力等)
借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
賃貸借の対抗は、原則登記が必要になりますが、借地権の場合、土地に建物(借地権者が登記されている建物)があれば登記が無くてもOK。
問題文は、土地の引渡しを受けただけなので、Bは、Cに対して借地権を主張することができません。
なので、【誤り】
基礎問題です。
②の解説:誤り
【問題文】
本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。
借地借家法 第11条(地代等増減請求権)
1.地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
問題文では、「増減」を行わない特約ですが。「増額」しない特約であれば、その定めに従うことになりますが。「減額」を行わない特約は、無効となります。
借地借家法は、「借主」側を守る法律です。この考えをしっかり押さえれば解けます。
増額は「借主」にとって不利ですが。
減額は「借主」にとって有利になります。
だから、減額を行わない特約は、無効としているということです。
その為、答えは【誤り】となります。
③の解説:誤り
【問題文】
本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。
第13条(建物買取請求権)
1.借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
最判昭35年2月9日
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
条文では、契約満了して更新しなければ、建物買取請求権がある。とありますが。
借地人の債務不履行があれば、建物等買取請求権は有しないとしています。
債務不履行している状態では、借地人の保護はしませんよ。ということですね。
当然と言えば当然ですよね。
問題文では、この判例の内容を特約に入れてあるだけです。
その為、この特約はあってもなくても、同じ結論になります。
その為、答えは【誤り】となります。
借主の保護が目的と言っても債務不履行した人まで保護しないだろうと考えれば自ずと答えが導ける問題ですね。
④の解説:正しい
【問題文】
AとBとが期間満了に当たり本件契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。
借地借家法 第4条(借地権の更新後の期間)
当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地権の場合、期間を定めなくても、当初30年、更新後は20年(2回目以降は10年)と期間は定まります。※したがって、借地権には「期間の定めのない」ということはない
そして、それより短い期間で定めた時は、この基本の期間通りとなります。
逆に、基本の期間より長く定めた場合には、その期間となります。
当初30年、更新後は20年(2回目以降は10年)は、基本なので覚えましょう。
なので、答えは【正しい】
<まとめ 正解:4>
①は、基礎問題です。
②は、基礎問題です。借地借家法の基本的な考え方を把握
③は、基礎問題です。
④は、基礎問題です。
全体的に借地借家法の基礎問題でした。
必ず得点したい問題ですね。
借主保護が目的であることが軸に法令が出来ているので、そこを踏まえて考えていくと、内容が理解しやすいです。