令和2年(2020年10月)問14<不動産登記法>
不動産の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
- 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができる。
- 債権者Aが債務者Bに代位して所有権の登記名義人CからBへの所有権の移転の登記を申請した場合において、当該登記を完了したときは、登記官は、Aに対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。
- 配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。
解答
①の解説:正しい
【問題文】
敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければ、当該区分建物に係る所有権の保存の登記を申請することができない。
第74条2項(所有権の保存の登記)
区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
これは、マンションの分譲会社が建物に対して【表示登記】だけを行い、各区画を購入した人が、所有権保存登記が出来るということです。
基の所有者はマンションの分譲会社ですが。その時にその会社が【所有権保存登記】をすれば、購入者は【所有権移転登記】になりますが。
それをしてしまうと【所有権保存登記】⇒【所有権移転登記】と2回登録免許税が発生してしまいます。そこで、出来るだけ費用をかけないために、マンションの分譲会社は【表示登記】だけして、そこから購入者に直接【所有権保存登記】をしてもらうことが出来るようにしました。
しかし、その時は、当然元の所有者である【分譲会社】の【承諾】が必要になるということです。そうでなければ、勝手に保存登記されてしまっては困りますからね。
そのため、答えは【正しい】となります。
基礎用語の意味をしっかり押さえている必要があります。
【表示登記とは?】【所有権保存登記とは?】【所有権移転登記とは?】
②の解説:誤り
【問題文】
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合であっても、その承諾を得ることなく、申請することができる。
第109条1項(仮登記に基づく本登記)
所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。
具体的にいうと、A所有の土地を①Bが10/8に仮登記②Cが11/1に本登記その後、③12/31にBが本登記するために、利害関係者であるCの承諾が必要になる。ということ。
仮登記とは・・・手続き上あるいは実体法上の要件が完備していない場合に、将来の本登記の順位を確保するためになされる予備的な登記のこと
あくまで、「仮」なので、このケースのように先に本登記をされてしまうことがあります。この場合、Cからすると自分の権利がなくなってしまうので本登記を承諾することは基本的にはありません。そうした時Bは、その承諾を請求する裁判を起こし、確定判決を得て承諾に代えることが出来ます。
そのため、答えは【誤り】となります。
仮登記に対する正しい理解と、なぜ承諾が必要となるのかが理解できれば解ける問題です。
③の解説:誤り
【問題文】
債権者Aが債務者Bに代位して所有権の登記名義人CからBへの所有権の移転の登記を申請した場合において、当該登記を完了したときは、登記官は、Aに対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。
第21条(登記識別情報の通知)
登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。
「当該申請人」とは、ここでは登記名義人のことを示していて、申請人に対して通知する分けてはありません。
問題文では、登記名義人であるBではなくAに通知となっているため、答えは【誤り】となります。
登記識別情報とは、簡単にいうと【権利書】のようなものです。
そんな大事なものを所有者になる人でない者に通知するのはおかしいと考えれば答えは出てくると思います。
④の解説:誤り
【問題文】
配偶者居住権は、登記することができる権利に含まれない。
被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
1 居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。
2 第六百五条の規定は配偶者居住権について、第六百五条の四の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する。
条文の通り、配偶者居住権は登記することができる権利です。
<まとめ 正解:1>
①は、基礎用語をしっかり押さえれば解ける問題です。
②は、仮登記の基礎知識を理解し例れば解ける問題です。
③は、登記識別情報を理解していれば推測できます。
④は、知らなかったら解けない問題です。
正解となる①については、十分解ける問題でしたので、全てが分からなくても答えにたどり着くことが出来たと思います。
難度が高い問題でも、基礎がしっかり理解できていればすべての選択肢に答えることが出来なくても問題を解くことが出来るということです。
細やかな知識よりも基本的知識をしっかり理解していることがもっとも大事になります。