令和2年(2020年10月)問32<宅建業法(8つの制限)>
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者ではないBとの間で建物の売買契約を締結する場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
- AB間の建物の売買契約において、Bが当該契約の履行に着手した後においては、Aは、契約の締結に際してBから受領した手付金の倍額をBに現実に提供したとしても、契約を解除することはできない。
- AB間の建物の売買契約における「法第37条の2の規定に基づくクーリング・オフによる契約の解除の際に、当該契約の締結に際しAがBから受領した手付金は返還しない」旨の特約は有効である。
- AB間の建物の割賦販売の契約において、Bからの賦払金が当初設定していた支払期日までに支払われなかった場合、Aは直ちに賦払金の支払の遅滞を理由として当該契約を解除することができる。
- AB間で工事の完了前に当該工事に係る建物(代金5,000万円)の売買契約を締結する場合、Aは、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じた後でなければ、Bから200万円の手付金を受領してはならない。
解答
①の解説:正しい
【問題文】
AB間の建物の売買契約において、Bが当該契約の履行に着手した後においては、Aは、契約の締結に際してBから受領した手付金の倍額をBに現実に提供したとしても、契約を解除することはできない。
宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。 民法 第557条1項(手付)
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
基礎問題です。
民法の手付と合わせて理解することで知識が深まります。
民法は、一般法で、宅建業法は、特別法です。
その関連性を踏まえたうえで、宅建業法の成り立ちを考えながら意味を読み取りましょう。
宅建業者を売主とする売買契約において、不動産の取引知識や経験の乏しい消費者から多額の手付を交付させて手付放棄による解除を封じ込めるなどの不当な業者から買主を守るために、宅建業法にて下記のルールができました。
①手付は代金の2割(20%)まで
②どのような手付でも解約手付にする
③買主に不利な特約も無効
(例:売主業者も受領した手付を返還するだけで解除できる等の特約は、無効)
②の解説:誤り
【問題文】
AB間の建物の売買契約における「法第37条の2の規定に基づくクーリング・オフによる契約の解除の際に、当該契約の締結に際しAがBから受領した手付金は返還しない」旨の特約は有効である。
宅地建物取引業法 第37条の2第3項 クーリング・オフにょる契約の解除
クーリング・オフが適用され解除された場合、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
宅地建物取引業法 第37条の2第4項
規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする
基本的考え方として、宅建業者が売主の場合、その相手方(宅建業者以外)との契約の内容において、相手方が不利な契約になるような特約はダメですよ!
というのを抑えておいてください。
それが分かれば、あとは問題文の内容が相手方が不利かどうかが分かれば問題が解ける。ということです。
問題文では、クーリング・オフによる解除をすると手付金は返還しない。とありますが。
クーリング・オフによる解除とは、契約前に元通りになるので、何かしら支払ったものがあったとしても、それは全て返還しなければいけません。これが基本です。
相手方としては、当然支払ったお金は変換してほしいですよね。にもかかわらず、返還しませんという特約は、相手方にとって不利な条件です。
そのため、答えは【誤り】となります。
基礎問題ですが。基本的な考え方を知っていると記憶にも定着します
③の解説:誤り
【問題文】
AB間の建物の割賦販売の契約において、Bからの賦払金が当初設定していた支払期日までに支払われなかった場合、Aは直ちに賦払金の支払の遅滞を理由として当該契約を解除することができる。
宅地建物取引業法 第42条(宅地又は建物の割賦販売の契約の解除等の制限)
1 宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について賦払金の支払の義務が履行されない場合においては、30日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。
2 前項の規定に反する特約は、無効とする。
支払が出来なかったからといって【直ちに】解除出来るわけではありません。
一定の期間の猶予を持たせています。また、この定めに反する特約は、無効としています。
直ちに解除できるなんて特約はダメですよ。ということです。
宅建業者と一般の相手方では、一般の相手方が不利にならないようにしているということです。そのため、答えは【誤り】です。
基礎問題です。
これが、民法の場合は、売主は「相当の期間」を定めて催告をし、その期間内に履行がされないときは、契約を解除することができる。としていますが。
期間はケースバーケースで、特約も自由にすることができます。
④の解説:誤り
【問題文】
AB間で工事の完了前に当該工事に係る建物(代金5,000万円)の売買契約を締結する場合、Aは、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じた後でなければ、Bから200万円の手付金を受領してはならない。
手付金等の保全措置
工事完了前ということは未完成物件ということです。
未完成物件の場合は、代金5/100以下であれば保全措置不要となります。
5,000万円の5/100以下とは、250万円以下となります。
そのため、200万円の手付金の場合には、保全措置は不要となります。
この表は完全に覚えましょう。
セットで、①手付金の限度額②損害賠償額の予定限度額③手付金等の保全措置
を覚えるのがお勧めでです。
私が教えている講座では、これらを記憶術にてあっという間に覚える方法をお伝えしています。覚えれば解ける問題は、記憶術でさっと覚えてしまうのが効率的ですね。
<まとめ 正解:1>
①は、基礎問題です。
②は、基礎問題です。
③は、基礎問題です。
④は、基礎問題です。
基礎問題です。確実に得点しましょう。