令和2年(2020年10月)問42<宅建業法(8つの制限)>
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として締結する売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- Aが宅地建物取引業者ではないBとの間で締結する宅地の売買契約において、当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年とする特約を定めた場合、この特約は有効である。
- Aが宅地建物取引業者ではないCとの間で建築工事の完了前に締結する建物(代金5,000万円)の売買契約においては、Aは、手付金200万円を受領した後、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じなければ、当該建物の引渡し前に中間金300万円を受領することができない。
- Aが宅地建物取引業者Dとの間で造成工事の完了後に締結する宅地(代金3,000万円)の売買契約においては、Aは、法第41条の2に定める手付金等の保全措置を講じないで、当該宅地の引渡し前に手付金800万円を受領することができる。
- Aが宅地建物取引業者ではないEとの間で締結する建物の売買契約において、Aは当該建物の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わないとする特約を定めた場合、この特約は無効となり、Aが当該責任を負う期間は当該建物の引渡日から2年となる。
解答
①の解説:誤り
【問題文】
Aが宅地建物取引業者ではないBとの間で締結する宅地の売買契約において、当該宅地の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年とする特約を定めた場合、この特約は有効である。
Aが宅建業者、Bは宅建業者以外(一般)のため、8種規制が適用されます。
宅地建物取引業法 第40条(担保責任についての特約の制限)
1.宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2.前項の規定に反する特約は、無効とする。
民法第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
民法上では、「買主がその不適合を知った時から1年以内」に通知が必要ですが、宅建業者が自ら売主の場合(8種規制)は、「引渡しの日から2年以上」の特約はOKで、それ以外の買主に不利となる特約はダメ(民法より買主より不利になる内容はダメ)としました。
パッとみるとこのことが論点で問われているように見えますが。
この条文は、「いつまでに通知しないと契約不適合責任を追及できなくなる」という内容で、問題文は「不適合を担保すべき責任を負う期間」が論点になっているということです。
例えば、不適合を発見して期間内に通知をすることで契約不適合責任を追及することが出来るようになります。ではその通知をした後に、いつまで【契約不適合責任を追及】できるのか?ということです。
これは、【債権の消滅時効】の内容です。
民法 第166条1項(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
ということは、問題文では「不適合を担保すべき責任を負う期間をBがその不適合を知った時から2年」となりますので、民法では「知った時から5年間」としていますので、民法よりも買主(一般)が不利な特約だということがわかります。
そのため、答えは【誤り】となります。
この問題は、出題者のミスのようで、本来は通知の期間が論点で考えていたようです。
通知の期間が論点であれば、正しいとなるところでした。
②の解説:正しい
【問題文】
Aが宅地建物取引業者ではないCとの間で建築工事の完了前に締結する建物(代金5,000万円)の売買契約においては、Aは、手付金200万円を受領した後、法第41条に定める手付金等の保全措置を講じなければ、当該建物の引渡し前に中間金300万円を受領することができない。
手付金保全措置フロー
このフローチャートを頭に入れれば、簡単にとけますね。
なので、答えは【誤り】です。
③の解説:正しい
【問題文】
Aが宅地建物取引業者Dとの間で造成工事の完了後に締結する宅地(代金3,000万円)の売買契約においては、Aは、法第41条の2に定める手付金等の保全措置を講じないで、当該宅地の引渡し前に手付金800万円を受領することができる。
宅地地建物取引業法 第78条(適用の除外)
1.この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。
2.第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物
取引業者相互間の取引については、適用しない。
業者間同士の取引の場合は8種規制は、一切適用されません。
あくまで、プロ対一般の取引の時に、一般の取引相手を守る為の規制です。
こうした目的を知っているかどうかが、細かい知識を覚えるのに役に立ちます。
そのため、答えは【正しい】
④の解説:誤り
【問題文】
Aが宅地建物取引業者ではないEとの間で締結する建物の売買契約において、Aは当該建物の種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を一切負わないとする特約を定めた場合、この特約は無効となり、Aが当該責任を負う期間は当該建物の引渡日から2年となる。
宅地建物取引業法 第40条(担保責任についての特約の制限)
1.宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。
2.前項の規定に反する特約は、無効とする。
民法 第166条1項(債権等の消滅時効)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
宅建業者と一般の取引ですので、8種規制がかかります。
契約不適合責任を負わないというのは、明らかに買主が不利になる特約ですので、この特約は無効です。
特約がない場合は、民法のルールとなります。
民法のルールでは「権利を行使することができる時から10年間」とありますので、これは「引渡から10年間」と解釈できますので、問題文の「引渡日から2年」というのは、
【誤り】ということです。
<まとめ 正解:1と4>
①は、出題ミスでした。民法の知識も求められる問題でした。
②は、基礎問題です。
③は、基礎問題です。
④は、民法の知識も求められる問題でした。
②と③は基礎問題で、①と④で迷う人がいたかもしれませんが。
どちらでも正解だったので、結果的にラッキー問題でした。