令和2年(2020年12月)問3<親族>
親族に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- 姻族関係は、離婚した場合及び夫婦の一方が死亡した場合、当然に終了する。
- 離婚に当たり、相手方に有責不法の行為がなければ、他の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができない。
- 未成年者に対して親権を行う者がないときは、家庭裁判所は、検察官の請求によって、親族の中から未成年後見人を選任する。
- 夫婦間で婚姻の届出前に別段の契約をしなかった場合、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される。
解答
①の解説:誤り
【問題文】
姻族関係は、離婚した場合及び夫婦の一方が死亡した場合、当然に終了する。
民法 第728条(離婚等による姻族関係の終了)
1.姻族関係は、離婚によって終了する。
2.夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
この問題は、直接的には宅建の勉強するにあたって触れることはないかもしれませんが。
既存の知識から推測することができる問題です。
解くことができれば、他の受講生を出し抜くことができるようになりますね。
姻族関係とは、「3親等内の配偶者の血族(民法725条3号)」義理の父母は、義理の兄弟姉妹のことです。
この時、「死亡または離婚した時、姻族関係が終了する」とありますが。
相続で考えた時どうでしょうか?
妻が亡くなれば、夫は相続人になりますし。
夫が亡くなれば、妻が相続人になりますね。
ということは、「死亡した場合、姻族関係が終了」していないということがわかります。
これは、相続の基礎的な知識ですので、この知識を結びつけて考えれば実は簡単に回答することができますね。
そのため、答えは『誤り』となります。
②の解説:誤り
【問題文】
離婚に当たり、相手方に有責不法の行為がなければ、他の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができない。
財産分与(請求)
夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配
慰謝料(請求)
精神的苦痛を慰謝するための損害賠償
この問題は、宅建の勉強するにあたって触れることはないでしょう。
その為、知識としては間違っても仕方ないとも言えますが。
「有責不法」というのが、離婚の原因となり得る不倫などによる慰謝料請求を思い浮かぶことができると理解しやすいと思います。
とはいえ、そうした慰謝料といわれるもの以外でも、婚姻生活の中で夫婦で形成してきた財産もあると思います。その中で、例えば、夫の名義の預貯金に全て財産を移していたなど。そうした財産については、一部は妻の財産であるともいえるので、請求できる場合もあるだろうと推測できると答えにたどり着くことができると思います。
③の解説:誤り
【問題文】
未成年者に対して親権を行う者がないときは、家庭裁判所は、検察官の請求によって、親族の中から未成年後見人を選任する。
民法 第839条 (未成年後見人の指定)
1.未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
2.親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
民法 第840条(未成年後見人の選任)
1.前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
親権者は、基本的に親になるが、その親がいないときどうなるか?という話。
この問題も、宅建の勉強するにあたって触れることはないでしょう。
まずは、親が遺言をしていれば、遺言で指定された人が未成年後見人となります。
それすらもいない場合どうなるか?
問題文では「検察官の請求によって親族の中から選任する」となっています。
確かに、ここは勉強していないので難しいと思います。
しかし、2点について疑問を持つことで答えに近づけることは出来ると思います。
1つは、「検察官の請求」です。
一般常識として「検察官」が何をする人か?
検察官とは
検察官は法律に違反した犯罪や事件を調しらべて,その犯人を裁判にかける仕事
昔、木村拓哉さんがやっていた【HERO】というドラマがありましたね。
なので、検察官は、「刑事事件」の対応をするイメージですね。
【検察官の請求】で、親権者が決まるとありますが。
例えば、両親が事故で亡くなって子供だけが取り残された時、その両親の親や兄弟姉妹が話し合って、誰がその子供を引き取るのかを決める。というのが常識的ではないでしょうか?
そうすると、急に検察官出てきてがあなたが引き取りなさいと請求するのはちょっと強引な気がします。そう考えると、親族が「私が引き取ります」と、家庭裁判所に請求をかけるというのがしっくりきますね。
次に、【親族の中から】とありますが。
親族がいないケース、親族に引き取り手がいないケースも考えられます。
そうした場合は、「児童養護施設」や「里親制度」などで引き取られることになります。
なので、親族以外が未成年後見人に選任されることも想定できますね。
ここら辺は、宅建の勉強と言うよりは、一般常識や一般教養の知識を応用して考えられる力を試されていますね。
なので、答えは【誤り】となります。
難しい問題でした。
④の解説:正しい
【問題文】
夫婦間で婚姻の届出前に別段の契約をしなかった場合、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される。
民法 第762条(夫婦間における財産の帰属)
1.夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2.夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
記述の通りですが、この問題も、宅建の勉強するにあたって触れることはないでしょう。
とはいえ、「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産」を夫の財産にするという法律があったら、これは平等ではないですよね。
法律は【平等】であることが求められるわけなので。
不明であれば、共有とするのが妥当かなと考えられると思います。
そのため、答えは【正しい】
<まとめ 正解:4>
①は、「相続」を考えれば、答えを推測できる。
②は、元々自分の物があれば、それは当然請求できるだろうということを発想できるかが、ポイント
③は、親族以外でも未成年後見人が選任されることも想定できるかどうか。
④は、平等の精神から考えると妥当、逆に①~③の誤りに気づけば消去法で。
宅建では勉強しない範囲の問題です。
今回この問題が出たからと言って、この範囲を勉強する必要はありません。
多くの人が間違える問題なので、間違ってもOK
時間がかかるなら捨て問題にしてもいいと思います。
しかし、逆にここで1点とれれば他を引き離す大きな1点になります。
それが出来るためには、もともと持っている「知識(一般常識・一般教養)」を駆使して、仮説を立て推測しながら問題を解く力を付けることです。
今後宅建では、知識があれば解ける問題ではなく、その知識がなくても思考することで、答えに近づくことが出来る力を求められる問題が増えていくと思います。
この問題では、新しい知識を頭に入れることよりも、答えにたどり着く思考力を学びましょう。