令和2年(2020年)12月

令和2年(2020年12月)問6 転貸借【宅建過去問】

令和2年(2020年12月)50問 全解答はこちら



令和2年(2020年12月)問6<転貸借>

AはBにA所有の甲建物を令和2年7月1日に賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。
  2. Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。
  3. AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
  4. BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。

      

解答

こちらをクイック


 
  
①の解説:誤り

【問題文】
Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。

民法 第613条(転貸の効果)第3項
3.賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。


【原則】
賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。(明渡請求出来ない)
【例外】
賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
(明渡請求できる)

このように【原則】と【例外】に分けて理解すると覚えやすいです。
その為、答えは【誤り】です。
基礎問題です。

②の解説:正しい

【問題文】
Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。

民法 第600条
1.契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2.前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

民法 第622条
第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに第600条の規定は、賃貸借について準用する。

※消滅時効のルールは、権利を行使することができる時から10年間とありましたが、賃貸人が賃借人の使用状況を把握することは困難であるため、通常の使用方法を逸脱する違反があったときから10年以上経過した場合でも、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しないとしました。

条文の通りです。
そのため、答えは【正しい】です。
基礎問題です。

③の解説:正しい

【問題文】
AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。

借地借家法 第31条第1項(建物賃貸借の対抗力等)
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

【原則】
約定通りですが。
今回のケースでは、転借人Cが甲建物に居住しているため、甲建物は、AからB、BからCへと建物の引渡があったことが分かります。
引渡があれば、Bは、甲建物の賃借権について、Dに対し対抗要件を備えていることになります。
【例外】
例外は、AD間で賃貸人たる地位を留保した場合(民法605条の2第2項)
この場合、Aが賃貸人たる地位にとどまります。

民法 第605条の2第2項(不動産の賃貸人たる地位の移転)
前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する 。

借地借家法の考え方としては、居住している人を守る目的があります。
なので、貸す側よりも借りている側の方が、少し有利な法律になっていると考えましょう。
だから、貸す人が変わった(譲渡された)場合でも、借主は、住み続けることが出来る(=の賃借権は守られている)ようにしています。

そのため、答えは【正しい】です。

④の解説:正しい

【問題文】
BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負いBに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。

民法 第613条(転貸の効果)
1.
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

条文の通りです。賃貸人は、転借人に対して直接請求することができます。
ただし、CがBに前払したとしても、Aには請求する義務が残されており、もしAに対してBもCも賃料の支払いをしなかった場合は、債務不履行を理由にAは、Cに対して明渡し請求することができます。

そのため、答えは【正しい】となります。
賃借人が守られているとはいえ、家賃の支払いが出来ない人に対して甘くする必要はないですよね。

<まとめ 正解:1>
①は、基礎問題です。
②は、基礎問題です。
③は、基礎問題です。
④は、基礎問題です。

きちんと学んでいる人であれば、問題なく解けると思います。

令和2年(2020年12月)50問 全解答はこちら

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です