令和2年(2020年)12月

令和2年(2020年12月)問7 売買契約【宅建過去問】

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令和2年(2020年12月)問7<売買契約>

Aを売主、Bを買主として、令和2年7月1日に甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。
  2. AがBに甲土地の引渡しをすることができなかった場合、その不履行がAの責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、BはAに対して、損害賠償の請求をすることができる。
  3. Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。
  4. 本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。

      

解答

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①の解説:誤り

【問題文】
甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。

契約不適合責任とは
買主に引き渡された目的物や買主に移転した権利が、種類品質数量に関して契約の内容に適合しないときに、売主が買主に対して負う債務不履行責任のこと

契約不適合の内容によって責任追求できる期間が違う

種類に関する不適合

左記に関して契約の「内容」に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から「1年以内」に不適合(種類・品質)の旨を「売主」に通知しないとき「買主」は、その不適合を理由として、売主に責任を追求することができなくなる
②ただし、「売主」が引き渡しの時にその不適合を「知り」、又は「重大な過失」によって知らなかったときは、上記の期間制限はなく責任追求できる

品質に関する不適合
数量や移転した権利が契約内容に不適合の場合 消滅時効の規定が準用される)
①債権者が権利を行使することできることを知った時から5年間行使しないとき
権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

契約不適合の買主の「4つの権利」
①追完請求権利
②代金減額請求権
③契約解除権
④損害賠償請求権

この問では、「面積が少なかった」としているので、数量に関する契約不適合ということになります。数量の場合の請求期間は、「消滅時効」と知った時から5年、もしくは、権利を行使できる時から10年、になるため「知った時から2年以内」というのは、誤りということになります。

代金減額請求については、買主4つの中に含まれますね。

そのため、答えは【誤り】です。
基礎問題になります。

・契約不適合とは?
・契約不適合の「種類」「品質」「数量」それぞれの責任追求期間とは?
・契約不適合の買主4つの権利とは?

これらについて、何も見ないで一つ一つ説明できるようになりましょう。


②の解説:正しい

【問題文】
AがBに甲土地の引渡しをすることができなかった場合、その不履行がAの責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、BはAに対して、損害賠償の請求をすることができる。

民法 第415条第1項(債務不履行による損害賠償)
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

条文の通りになります。
引き渡しができないということは、契約不適合となりますので、当然損害賠償請求ができることになります。

一方で「責めに帰することができない事由」というのは、危険負担の話ですね。

第536条第1項(債務者の危険負担等)
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。

ということは、この場合は損害賠償の請求は出来ません。
なので、「責めに帰することができない事由によるものであるときを除き」といのも、正しいことになります。

そのため、答えは【正しい】です。
基礎問題です。

③の解説:誤り

【問題文】
Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。

民法 第415条第1項(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

民法 第419条第1項(金銭債務の特則)
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定めるただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

民法 第404条(法定利率)
1.利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2.法定利率は、年3パーセントとする。

期日までに支払いをしなかったのであれば、当然履行遅延となり、損害賠償の請求できますね。ここまでは、問題ないと思います。

ポイントは、遅延損害金について。
特段の定めがない。ということであれば【法定利率】となります。
法定利率は3%となります。ここは覚えておきましょう。

なので、答えは【誤り】となります。
基礎問題です。

④の解説:誤り

【問題文】
本件契約が、Aの重大な過失による錯誤に基づくものであり、その錯誤が重要なものであるときは、Aは本件契約の無効を主張することができる。

民法 第95条(錯誤)
1.意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

2.前項第二号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3.錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

4.第1項の規定による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

錯誤は、民法改正により無効ではなく、取り消しすることができるとしました。
また、錯誤とは、簡単にいうと【勘違い】のことです。
勘違いしたことに、重大な過失があったにも関わらず、その人が守られるなんてことがあったら、どんな契約でも、「勘違いでした・・・」と言って簡単に契約が取り消すことができてしまいます。

それでは、契約の意味がないですよね。
そう考えれば、重大な過失があるのであれば、当然取り消しはできなくなると考えることができますね。

そのため、答えは【誤り】です。
意思表示の錯誤の基礎問題です。

<まとめ 正解:2>
①は、基礎問題です。契約不適合について
②は、基礎問題です。債務不履行について
③は、基礎問題です。法定利率について
④は、基礎問題です。意思表示の錯誤について

分野がいくつかにわたっていますが。どれも基礎問題です。
落ち着いて問題を解くことができれば問題ないと思います。

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