令和2年(2020年12月)問9<地役権>
地役権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。
- 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
- 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。
- 要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。
解答
①の解説:誤り
【問題文】
地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。
民法 第280条(地役権の内容)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
民法 第283条(地役権の時効取得)
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
要役地・・・利用する側の土地
承役地・・・利用される側の土地
問題としては、【又は】ではなく【かつ】だったという引っ掛け問題ですね。
正しく理解していれば、解ける問題です。
まず、地役権といったら、下記の図(通行地役権)をイメージしましょう。
他人の土地を通行して自宅を行き来できるようするような場合に地役権を設定します。
他人の土地を利用することを考えると、簡単に時効取得出来てしまっては、問題ですよね。
そのため、「地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる」としているのです。
そのため、答えは【誤り】です。
②の解説:正しい
【問題文】
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
民法 第280条(地役権の内容)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
「他人の土地」は「承役地」のこと
「自己の土地」は「要役地」のこと
そのため、答えは【正しい】です
③の解説:正しい
【問題文】
設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。
民法 第286条(承役地の所有者の工作物の設置義務等)
設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
条文の通りですね。
どんなイメージかというと、承役地の所有者は、要約地の所有者のために土地を使わせてあげた上に、承役地の所有者が要約地の所有者のために「工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担する」わけです。
考えてみると、使うのは要約地の所有者なので、そっちが負担すればいいのでは?とも考えられますが。ここで想定されているのは、通行地役権を有償で使わせてあげているケースを考えればどうでしょうか。
賃貸物件でも、建物の修繕は賃貸人が直しますね。
そして、承役地の所有者その土地を別の人に譲渡した時、その義務を承継するということです。賃貸人の立場が譲受人に移転するのと同じイメージですね。
そのため、答えは【正しい】となります。
④の解説:正しい
【問題文】
要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。
民法 第281条(地役権の付従性)
1.地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2.地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。
つまり、要役地が売却された場合、所有権だけでなく、地役権も移転します。
購入した土地の所有権に対する対抗要件(所有権移転登記)を備えていれば、所有権だけでなく、地役権も対抗することができます。
そのため、答えは【正しい】となります。
<まとめ 正解:1>
①は、引っ掛け問題
②は、基礎問題
③は、難しい。賃貸のケースを想定して考える
④は、対抗要件の考え方も理解している必要があります。
引っ掛け問題+難易度が高い問題でした。
本番ではなかなか解けないかもしれませんが。これを読み解くことができるとかなり読解力が鍛えられると思います。